やるぞペガス!

「えぇっ? もう一度言って下さいっ。」
ボクはついつい訊き返してしまう。訊き返さずに居られない。
ここは歯医者さんの待合室。
今日の治療を終えて、受付で会計と次回予約をした時のお話。
「はい、お会計は170円です。」
「うお安っ。はい、220円。」
「50円のお釣りです。はい。」
「あ、ども……って違っ! そっちじゃなく。」
「はい、なんでしょう?」
「その、次回の治療内容ですってば。」
「ああ、はいはい。テック・セットです。」
……。
テック・セット!?
ボクにペガスの中でテッカマンに変身しろと!?
歯医者さんでは茶飯事ッスか!?
予約帳を覗き込む。覗き込まずに居られない。
ホントだ。ちゃんと書いてある。
"Tech Set"って。
一体神は、いや、梅田のヤロウはボクに何を求めているのかッ!?
と、独りアツくなっていると。
「分かり易く言うと、上に歯を被せるってコトですよ。」
えっ……。
あっ。
「あ、そ……うなんですか、そうです、よね。あ、はい、ではどうも。」
「? お大事に〜。」
ボクの落胆っぷりに受付のお姉さんは首を傾げながらもご挨拶。



そうだよな。
人生そんなに上手く行くわけないよな。
しかも歯医者でさ。
一瞬期待してしまっただけに泣けてくるぜ……。